Dr大島の病気一口メモ「胃腸炎」

小さなお子さんはお熱や疲れなど、体調が悪い時に嘔吐をすることがありますが、嘔吐を繰り返す場合には感染性胃腸炎を疑います。
感染性胃腸炎には「細菌性」と「ウイルス性」があり、家族内や保育園・幼稚園などで圧倒的に多いのはウイルス性胃腸炎です。

 

感染経路

胃腸炎を起こすウイルスはたくさんありますが、小さなお子さんではロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスによる胃腸炎が多く、原因微生物の付着した手指で食事をとることによる糞口感染が主となります。
その他、感染者の使用した衣類、タオル、トイレ、吐物や下痢に汚染された寝具や床を介しても感染します。

 

症状

主な症状として吐き気、嘔吐、下痢、発熱、腹痛があげられます。潜伏期間は1-3日程度です。
嘔吐と下痢が同時に出現することもありますが、初発症状として嘔吐からはじまり、後に下痢を起こすこともあります。ほとんどの場合は2-3日で症状が改善してくることが多いものの、ウイルス性胃腸炎を治すお薬はなく、自身の免疫によって治るのを待つしかありません。そのため、数日で症状が改善してくるまでの間、症状を緩和したり、脱水を予防することが大事です。

ooshima01

・脱水の症状はないか?
・下痢の回数・量
・嘔吐の回数・量
・食事や水分がとれているか?
・尿の回数と量

 

これらの情報と診察所見をもとに脱水の程度を判断します。
発症前の体重と比較することで、どれだけの水分が失われているかを推測することができるので、診察時に日頃の体重をお知らせください。便の様子を写真でご持参いただくのも有用です。

 

治療

胃腸炎の治療の基本は、脱水の予防です。

体液に近い水分を口からこまめに摂取することです。お水、お茶、スポーツドリンクには失われた体液を補充するのに十分な電解質が含まれていません。OS-1」や「アクアライト」などは比較的多くの電解質が含まれており、胃腸炎時に適しています。特徴的な味を嫌がるお子様にはお吸い物やお味噌汁の上澄みでも十分な塩分を補うこともできます。
胃腸炎のときは胃腸の動きが悪く、吸収が悪い状態になっています。嘔吐した直後は、慌てて水分を与えず、お腹を休ませましょう。1〜2時間後からゆっくりとスプーンに1〜2杯の量から水分摂取を始めて下さい。(スプーンフィーディングといいます)
20分おきぐらいにスプーン1杯ずつ増やしていき、根気よく続けましょう。多くの場合はスプーンフィーディングで改善しますが、嘔吐の症状が強く、水分摂取ができない場合は点滴が必要になります。その時は医療機関を受診しましょう。

 

予防

感染性胃腸炎はとても感染性が高く、家族内や保育園・幼稚園などの濃厚接触がある場では流行しやすい病気ですが、予防の基本は手洗いです。感染者の有無に関わらず、手洗いを徹底しましょう。
家族内や近くに感染者がいる場合は感染する可能性がありますので、感染者の使用したもの(食器・衣類・タオル)は別に洗うことをお勧めします。アルコールで消毒できるものが多いですが、ノロウイルスなどの消毒はハイターなどの次亜塩素酸を含むものが有効です。

 

<消毒液を作る際の稀釈濃度>
 ・吐物や糞便が付着した床やトイレなど 1000ppm
 ・衣類などの漬け置き         200ppm
 ・食器類               製品の添付文書に従う
  ※ ppm(ピーピーエム)とは液体の微量な濃度の割合を示す言葉です。
   1ppmは百万分の1を表します。

 

例) トイレや床を消毒する際に1000ppm(0.1%)の稀釈消毒液を作る場合
家庭用塩素系漂白剤(ハイター等)の次亜塩素酸ナトリウム濃度はおよそ5〜6%程度です。
500mlペットボトル(水)+消毒液原液キャップ2杯分(10ml)
これでおよそ1000ppm濃度になります。
(製品によって原液の濃度が異なりますので、ご注意ください)

 

<消毒液を作る際の注意>
・次亜塩素酸を使用するときは誤って飲んでしまったり、直接肌に触れないよう、気を付けてご使用ください。
・アルコールや次亜塩素酸はフローリングや衣類を変色・傷めることもありますので、素材や濃度をご確認の上、ご使用ください。

 

▲ページトップへ